ベトナムの格闘家に注目すると、MMAやムエタイ、キックボクシングなど現代格闘技の勢いと多様性が立体的に見えてきます。
海外団体で活躍するベトナム系ファイターや、ベトナム国内リーグの台頭、旅行者でも通えるジムの充実ぶりまで知れば、ベトナム格闘技シーンの魅力がぐっと身近になります。
この記事では代表的な選手のプロフィールや、ベトナムでトレーニングする方法、歴史的な背景などを整理して、日本人ファン目線で楽しめる情報をまとめます。
ベトナムの格闘家から見える現代格闘技の姿
このセクションでは、世界で活躍するベトナムの格闘家やベトナム系ファイターを俯瞰しながら、現代格闘技シーンの輪郭をつかんでいきます。
世界で名を上げたベトナム系MMAファイター
ベトナムの格闘家を語るうえで外せないのが、アメリカやオーストラリアに渡ったベトナム系MMAファイターの存在です。
StrikeforceやUFCで活躍したカン・リーは、サイゴン生まれでアメリカに移住し、サイドキックやスピニング系の蹴りを武器に世界的な知名度を得ました。
ONE Championshipで二階級王者となったマーティン・ニューイェンも、ベトナム人の両親を持ち、シドニーで育ったベトナム系ファイターとして人気を集めています。
こうしたディアスポラの選手たちは、ベトナム国旗や黄色い三本線の旗を掲げて入場し、自らのルーツを誇りながら世界のファンを魅了しています。
ムエタイ王者として輝く選手
ベトナム本国から登場した代表的な打撃系ファイターが、ムエタイの名手グエン・チャン・ズイ・ニャットです。
ズイ・ニャットはアジアインドアゲームズのムエタイ男子フェザー級でベトナム唯一の金メダルを獲得し、その後も国際大会で数多くのタイトルを手にしてきました。
最近ではベトナム初の公認MMA大会であるLion Championshipの六十キロ級トーナメントでも優勝し、打撃だけでなく総合ルールでも強さを証明しています。
ムエタイをベースにしつつも、ボクシングやキックボクシングの要素を取り入れた現代的なスタイルは、ベトナム人選手の新しいモデルケースと言えます。
キックボクシングで存在感を示す選手
キックボクシングの世界でも、ベトナム出身選手は独自の存在感を放っています。
カン・リーはK−1にも参戦し、サンシー(散打)とテコンドー、レスリングを組み合わせた華やかな蹴り技で観客を沸かせました。
サウスポースタンスから繰り出されるサイドキックやスピニングバックキックは、相手のリズムを完全に崩す武器として知られています。
こうした打撃主体のベトナム系キックボクサーの活躍は、ベトナムが「蹴り技に長けた国」というイメージを世界に広げるきっかけになりました。
女性ファイターが切り開く新しい道
ベトナムの格闘家は男性だけではなく、女性ファイターも国際舞台で存在感を高めています。
ONE Championshipで戦うBee Nguyenは、ベトナムとアメリカ双方の国籍を持つストロー級の女性ファイターで、Heritage Muay ThaiやXtreme Coutureでトレーニングを積んできました。
小柄ながら前に出るスタイルとタフな打たれ強さで「キラービー」のニックネームを得ており、ベトナム系女性選手のロールモデルとして若い世代に影響を与えています。
女性がハードな打撃系格闘技に取り組む姿は、ベトナム社会におけるスポーツとジェンダーの価値観を変えていく力も持っています。
ベトナム国内リーグLion Championshipの登場
ベトナム国内のMMAシーンを語るうえで重要なのが、二〇二二年に始まったLion Championshipです。
これはベトナム初の公認MMAトーナメントであり、各階級のベルトをかけて国内の精鋭ファイターがしのぎを削っています。
グエン・チャン・ズイ・ニャットは六十キロ級トーナメントで優勝し、ムエタイ王者からMMA王者へとキャリアを広げました。
国内での興行が整備されることで、これまで海外に出なければ活躍の場がなかった若手選手にもチャンスが生まれています。
ONE Championshipで戦うベトナム系スター
ベトナムの格闘家に興味を持った日本人ファンが最も触れやすいのが、ONE Championshipの試合です。
マーティン・ニューイェンはフェザー級とライト級で世界王者となり、その豪快な右ストレートとカウンターで数々の名勝負を生み出しました。
Bee Nguyenは、打撃とグラップリングの両方を使い分ける総合型のスタイルで女子ストロー級の試合を盛り上げています。
二〇二五年には、ニュージーランドとベトナムのルーツを持つViet Anh DoがONE Friday Fightsで三戦連続となる一ラウンドKO勝利を挙げるなど、新しいスター候補も台頭しています。
日本人ファンから見たベトナムの格闘家の魅力
日本人ファンにとってベトナムの格闘家の魅力は、移民として逆境を乗り越えてきたバックストーリーと、ひたむきなファイトスタイルの両方にあります。
カン・リーやマーティン・ニューイェンのように、家族と共に新天地で生き抜きながら世界王者をつかんだ選手の物語は、多くの人の共感を呼びます。
また、ベトナム本国の選手たちがムエタイやMMAで強豪国に挑む姿は、競技レベルだけでなく、国としての成長や挑戦を象徴するものとして映ります。
異なる文化圏の選手を応援することで、試合観戦を通じた国際理解や旅行への関心が高まるのも大きな魅力です。
ベトナム出身格闘家の代表的なプロフィール
ここでは、ベトナム出身またはベトナム系の代表的な格闘家のプロフィールを整理し、どのようなキャリアやスタイルでファンを魅了してきたのかを見ていきます。
カン・リーの戦績とスタイル
カン・リーはサイゴン出身で、幼少期にアメリカへ移住したベトナム系格闘家です。
テコンドーとレスリング、サンシーをベースにした立ち技中心のスタイルで、キックボクシングでは十七戦全勝という圧倒的な戦績を残しました。
Strikeforceではミドル級王者となり、フランク・シャムロックを破った試合は今でも伝説的な一戦として語られています。
俳優として映画に出演しながらも、高いレベルで戦い続けた二刀流のキャリアは、多くのベトナム系アスリートの目標となっています。
マーティン・ニューイェンの歩み
マーティン・ニューイェンは、ベトナム人の両親が移民としてたどり着いたオーストラリアのシドニーで生まれ育ちました。
もともとはラグビーの有望選手でしたが、怪我で競技を断念し、二十一歳で体重管理と趣味のために格闘技を始めたことがプロキャリアの出発点になりました。
国内団体でチャンピオンとなった後にONE Championshipと契約し、フェザー級とライト級で世界タイトルを獲得して史上初の二階級王者となりました。
重い右ストレートとカウンター主体の打撃スタイル、試合後に家族やベトナムのコミュニティへ感謝を述べる姿は、多くのファンの心をつかんでいます。
- フェザー級とライト級の元二階級王者
- カウンター主体の打撃スタイル
- ベトナム系移民としてのバックストーリー
グエン・チャン・ズイ・ニャットの活躍
グエン・チャン・ズイ・ニャットは、ムエタイでアジアインドアゲームズ金メダルを獲得した実績を持つベトナム人打撃系ファイターです。
二〇〇九年のアジアインドアゲームズでは男子フェザー級で優勝し、ベトナム唯一のムエタイ金メダリストとして名を刻みました。
その後、Lion Championshipで六十キロ級トーナメントを制し、本格的にMMAでもタイトルを獲得してキャリアの幅を広げています。
ホーチミン市ではNo.1 Muay Clubというジムを立ち上げ、誰でも本格的なムエタイを学べる環境づくりにも力を入れています。
女性ファイターBee Nguyenの存在感
Bee Nguyenは、ベトナムとアメリカをルーツに持つ女子ストロー級の選手で、ONE Championshipなどで活躍してきました。
体重は約五十二キロ、身長百五十センチと小柄ながら、前に出続けるスタイルと豊富なムエタイトレーニングでタフな試合を展開します。
所属ジムはHeritage Muay ThaiとXtreme Coutureで、アメリカの本格的なトレーニング環境で鍛えられた技術を武器に世界の舞台に立っています。
彼女の存在は、ベトナム系女性でもトップレベルの格闘技キャリアを築けるというロールモデルとして、多くの若いファンにインパクトを与えています。
代表的ファイターの比較表
ここでは代表的なベトナム系ファイターを、階級や主戦場、スタイルの違いという観点から簡単に整理します。
| ファイター | カン・リー | マーティン・ニューイェン | グエン・チャン・ズイ・ニャット | Bee Nguyen |
|---|---|---|---|---|
| 主な階級 | ミドル級 | フェザー級とライト級 | フェザー級付近 | ストロー級 |
| 主戦場 | StrikeforceとUFC | ONE Championship | Lion Championshipとムエタイ大会 | ONE Championship |
| 得意スタイル | 散打とキックボクシング | ボクシング主体のMMA | ムエタイベースの打撃 | ムエタイとグラップリング |
| 代表的な実績 | Strikeforce世界ミドル級王者 | ONE二階級世界王者 | Lion Championship六十キロ級王者 | ONE女子ストロー級戦線で活躍 |
ベトナム国内の格闘技ジムとトレーニング環境
ここでは、ホーチミンやハノイを中心としたベトナムの格闘技ジム事情を紹介し、旅行者や駐在員でも通いやすい環境や特徴を整理します。
ホーチミンの大型総合格闘技ジム
ホーチミンには、MMAやムエタイ、ブラジリアン柔術、フィットネスを組み合わせた大型ジムがいくつか存在します。
Saigon Sports Clubはアジア最大級のトレーニング施設の一つとされ、本格的なMMAケージやムエタイリング、ウェイトトレーニングエリアを備えています。
ビジター利用にも対応しており、旅行中に一日だけクラスに参加することもできるため、観光とトレーニングを両立したい人にも人気です。
市内にはCalifornia Fitnessのようにフィットネス主体の大型ジムもあり、UFCケージを設置してボクシングやMMAクラスを提供している店舗もあります。
- MMAケージを備えたトレーニング環境
- ムエタイと柔術クラスの併設
- ビジター向けの一日体験プラン
ハノイのキックボクシング系ジム
首都ハノイでは、キックボクシングやフィットネスを組み合わせたジムが増えており、日本人駐在員にも利用しやすい環境が整っています。
Kickfit sportsはハノイ市内に複数店舗を構えるチェーンジムで、トレーニングマシンとキックボクシング系クラスを気軽に楽しめるのが特徴です。
月会費は大手フィットネスチェーンより比較的リーズナブルで、ヨガやZUMBAなどのクラスも受け放題のプランが用意されています。
ハノイで格闘技ジムを探す際は、自宅や職場からのアクセスだけでなく、シャワーやサウナの有無、日本人利用者の多さなども判断材料になります。
- 多店舗展開で通いやすい立地
- キックボクシングとフィットネスの両立
- 日本人利用者の多い店舗も存在
一般向けフィットネスジムとの違い
ベトナムの格闘技ジムは、一般的なフィットネスジムと比べて設備や雰囲気が大きく異なります。
一般的なジムはマシントレーニングやフリーウェイトが中心ですが、格闘技ジムではミット打ちやスパーリング、テクニッククラスなど実戦的なメニューが組まれています。
自分の目的がダイエットなのか、技術習得なのか、試合出場なのかによって、選ぶべきジムのタイプも変わってきます。
| 項目 | 一般的なジム | 格闘技ジム |
|---|---|---|
| 主な目的 | 健康維持と筋力アップ | 技術習得と実戦経験 |
| 設備 | マシンとフリーウェイト | リングとケージとマット |
| 雰囲気 | 一人で黙々とトレーニング | クラス制で仲間と練習 |
| 初心者へのサポート | マシンの使い方の説明 | 基本動作から丁寧な指導 |
ビジター利用で体験するコツ
旅行中にベトナムの格闘技ジムをビジター利用する場合は、事前準備と現地でのマナーが重要です。
まずは公式サイトやSNSでビジター料金やクラス時間を確認し、メールかメッセージで参加希望日を伝えておくとスムーズです。
クラス当日は、清潔なトレーニングウェアとタオル、必要ならマウスピースやグローブを持参し、早めに到着してスタッフに挨拶しておくと安心です。
スパーリングを行う場合は、強さを証明する場ではなく技術交流の場であることを意識し、無理に力を出し過ぎないことが大切です。
- 事前にクラス時間と料金を確認
- 必要な防具やウェアを持参
- インストラクターの指示を優先
ベトナムの格闘技シーンの歴史と背景
このセクションでは、ベトナムの格闘家がどのような歴史的背景や社会的文脈の中で生まれてきたのかを整理し、現在のシーンへのつながりを見ていきます。
ディアスポラが生んだファイター
ベトナム戦争後、多くのベトナム人がアメリカやオーストラリアなどへ移住し、その子どもたちから世界クラスの格闘家が生まれました。
カン・リーはサイゴン生まれで、幼い頃にアメリカに渡り、レスリングやサンシーを通じて格闘技の才能を開花させました。
マーティン・ニューイェンはベトナム人の両親のもとオーストラリアで育ち、移民家庭としての苦労を乗り越えて世界王者の座に上り詰めました。
Bee Nguyenもベトナム系としてアメリカで育ち、リング上でルーツへの誇りを体現する選手の一人です。
国内競技の発展とMMA公認化
一方でベトナム本国でも、伝統武術やボクシングから発展する形でMMAやキックボクシングが広がってきました。
二〇二二年に始まったLion Championshipは、ベトナムで初めて本格的にライセンス管理されたMMAトーナメントであり、国内選手の登竜門として機能しています。
近年は、タイで開催されるSEA GamesにベトナムのMMA選手団が派遣されるなど、国レベルでも総合格闘技への支援が強まっています。
こうした流れの中で、ムエタイやボクシング、伝統武術の経験者がMMAに転向し、新しいスタイルを模索するケースも増えています。
ムエタイと伝統武術の影響
ベトナムの格闘技シーンには、タイから伝わったムエタイと、自国に根付く伝統武術の双方が影響を与えています。
グエン・チャン・ズイ・ニャットはムエタイの国際大会で活躍した後、ベトナム国内でムエタイジムを開設し、若い選手の育成に取り組んでいます。
タイで行われたTHAI FIGHT Vietnamでの勝利は、ベトナム人選手がムエタイの本場に挑み結果を残せることを示した象徴的な試合でした。
国内では、伝統武術の要素を取り入れた打撃や投げ技が、ムエタイやボクシングとミックスされる形で独自のスタイルへと進化しています。
日本人がベトナムの格闘家と関わる方法
ここでは、日本に住むファンや格闘家志望の人が、ベトナムの格闘家や格闘技シーンとどのように関わっていけるのかを具体的に考えていきます。
試合観戦でベトナム選手を応援する
最も手軽な関わり方は、ONE ChampionshipやUFCなどの大会でベトナム系ファイターの試合を観戦し、ファンとして応援することです。
マーティン・ニューイェンやBee Nguyen、Viet Anh Doなどの名前を覚えておけば、試合カード発表のたびにベトナム系選手の動向を追いやすくなります。
配信サービスを通じて彼らの試合をリアルタイムやアーカイブで視聴し、SNSで感想をシェアすることも、選手への大きなサポートになります。
試合後のインタビューで語られる家族や祖国への思いに耳を傾けると、格闘技が単なる勝敗だけではないことを改めて感じられます。
現地ジムでの短期トレーニング
より踏み込んだ関わり方として、ホーチミンやハノイのジムで短期トレーニングを受ける方法があります。
Saigon Sports ClubやNo.1 Muay Club、Kickfit sportsなどは、旅行者や駐在員のビジター利用にも対応しており、日本人トレーニーの受け入れ実績も豊富です。
ベトナム人トレーナーやローカルファイターと一緒に汗を流せば、技術だけでなく文化や価値観に直に触れることができます。
短期滞在でも、打撃の基礎やクリンチワーク、簡単なコンビネーションを学ぶことで、日本に戻ってからの練習にも良い刺激となるでしょう。
- ビジター受け入れ可能なジムを選ぶ
- 英語か簡単なベトナム語フレーズを準備
- 安全第一で無理のない参加を心がける
日本のジムでベトナム系ファイターから学ぶ
近年は、日本国内のジムでも海外ファイターのセミナーや出稽古を受け入れる例が増えており、ベトナム系ファイターが来日して指導する機会も期待できます。
好きな選手やジムのSNSをフォローしておけば、日本で開催されるセミナー情報やファンイベントの告知をいち早く受け取ることができます。
海外ファイターの技術や考え方に直接触れることで、自分の格闘技観や練習方法に新しい視点が加わります。
将来的に現地ジムへ遠征したい人にとっても、日本で一度顔を合わせておくことは大きな安心材料になります。
ベトナムの格闘家と共に成長する楽しみ
ベトナムの格闘家やベトナム系ファイターの歩みを追うと、移民としての苦難や国内競技の発展、ムエタイや伝統武術との融合など、さまざまな物語が浮かび上がります。
世界で戦うスター選手からローカルジムの若手ファイターまで、それぞれの背景を知ることで、試合の一つひとつにより深い意味を感じられるようになります。
日本人ファンとしては、配信を通じた観戦やSNSでの応援、現地ジムでの短期トレーニングなど、距離を縮める手段がこれまで以上に増えています。
ベトナムの格闘家たちの挑戦を見守りながら、自分自身も格闘技やトレーニングを通じて成長していくことが、このシーンを楽しむ一番の醍醐味と言えるでしょう。

