バイク大国のベトナムでは、現地の人と同じようにバイクで走ってみたいと感じる人が多い一方で、どの免許なら合法的に乗れるのかが分かりにくいのが実情です。
特に日本の運転免許証や日本で発行した国際運転免許証は原則としてベトナムでは無効なため、知らずに乗ると無免許扱いになってしまうリスクがあります。
この記事では、ベトナムでバイクに乗るときの免許ルールを整理し、日本人観光客と在住者それぞれにとって現実的な選択肢と注意点を詳しく解説していきます。
ベトナムでバイクに乗るための免許ルール5パターン
まずはベトナムでバイクに乗るときに考えられるパターンを整理し、自分がどこに当てはまるのかを把握することが大切です。
滞在期間やバイクの排気量、どの国の免許を持っているかによって合法的な選択肢が変わるため、最初に全体像を押さえておくと後の判断がしやすくなります。
短期観光で50cc以下のバイクに乗る場合
ベトナムでは一般的に排気量50cc以下のバイクは運転免許が不要とされており、短期観光客でも法律上は免許なしで運転できる枠に入ります。
ただし実際の市街地では50cc以下の車両は少なく、レンタル店でも主流は110〜150ccクラスのスクーターである点に注意が必要です。
また免許が不要だからといって事故時の責任が軽くなるわけではなく、交通ルール違反や損害賠償の義務は現地の人と同様に負うことになります。
1968年条約型国際免許を持つ旅行者の場合
ベトナムは道路交通に関するウィーン条約(1968年条約)の締約国であり、この条約に基づいて発行された国際運転免許証のみを有効な国際免許として認めています。
そのため自国で発行された運転免許証と1968年条約型の国際運転免許証をセットで持っている旅行者は、ベトナム国内で条約に対応した車種区分のバイクを合法的に運転できます。
一方で日本の国際運転免許証はジュネーブ条約(1949年条約)に基づいており、このタイプはベトナムでは無効とされるため日本人がこのパターンを満たすことは通常できません。
日本の免許を書き換えて乗る場合
ベトナムに長期滞在する日本人の場合、日本の運転免許証をベトナムのバイク免許に書き換えてから運転する方法があります。
ベトナム側で定められたビザや在留資格を満たし、日本の免許証の翻訳や必要書類を用意すれば、学科試験が免除され実技または簡易試験だけでベトナム免許が発行されるケースもあります。
日本で二輪免許を持っていない人は書き換えができないため、この場合は現地で一から試験を受けてバイク免許を取得することになります。
現地で新規にバイク免許を取る場合
ベトナムで一定期間以上滞在しバイクを日常的に使う予定があるなら、現地でバイク免許を新規取得するのが最もシンプルで合法的な方法です。
一般的にはA1免許を取得すれば50cc超〜175cc未満のバイクに乗ることができ、筆記試験と実技試験に合格することで生涯有効の免許が手に入ります。
大型バイクに乗る予定がある場合は175cc以上を扱えるA2免許が必要となり、試験内容もやや難易度が高くなる傾向があります。
Grabバイクで二人乗り移動を選ぶ場合
自分で運転するのではなく、配車アプリGrabのバイクタクシーを利用して移動する方法なら運転免許は不要で、ヘルメット着用だけを守れば比較的安全にバイク体験ができます。
運転は現地の有資格ドライバーが担当するため、交通ルールや地理に不慣れな観光客にとってはリスクを抑えつつ機動力を確保できる選択肢です。
ただしラッシュ時の渋滞や雨季のスリップなど物理的なリスクは残るため、保険の補償範囲や天候を考慮しながら利用することが重要です。
ベトナムで有効なバイク免許の区分
ここではベトナムのバイク免許がどのような区分になっているかを整理し、どのクラスのバイクにどの免許が必要になるのかを明確にしていきます。
排気量ごとの区分と「免許不要」とされるゾーンを把握しておくことで、自分が乗りたいバイクに対してどのレベルの免許が求められるかがイメージしやすくなります。
バイク免許カテゴリーの基本区分
ベトナムの二輪免許は主にA1とA2に分かれており、それぞれがカバーする排気量の範囲が法律で定められています。
A1は一般的なスクーターや小型バイク向けで、日常的な移動に使われるモデルの多くがこの範囲に収まります。
一方で大排気量のスポーツバイクやツーリングバイクに乗る場合はA2が必要となり、取得のハードルもやや高めです。
| 免許区分 | A1 / A2 |
|---|---|
| 対象排気量 | A1は50cc超〜175cc未満 / A2は175cc以上 |
| 主な対象車種 | スクーター / 中大型バイク |
| 有効期間 | A1・A2とも原則有効期限なし |
| 取得可能年齢 | 18歳以上 |
50cc以下バイクの免許不要ルール
ベトナムでは排気量50cc以下のバイクや電動自転車は、原則として運転免許が不要と解釈されているのが一般的です。
このゾーンは高校生や一部の短期滞在者も利用しやすい枠として扱われていますが、市場に出回る車両が少ないという現実的な問題があります。
また警察の運用や保険会社の規約によって解釈が異なる可能性もあるため、「免許不要だから絶対に安心」と考えず慎重に判断する必要があります。
- 排気量50cc以下
- 電動自転車タイプ
- 市場では車種が少ない
- 保険適用条件は要確認
滞在期間別の免許条件
ベトナムでは観光客と長期在住者で求められる免許条件が変わるため、自分のビザの種類や滞在予定期間を前提に考えることが重要です。
短期の観光ビザで入国する場合は、自国免許と1968年条約型国際免許をセットで持っていることが合法運転の条件とされるケースが多くなります。
一方で3カ月超の長期滞在者や駐在員の場合は、現地のバイク免許に書き換えるか新規取得することが基本的な前提になります。
日本人観光客のバイク運転の注意点
日本人が観光でベトナムを訪れたとき、日本国内で取得した免許や国際運転免許証がそのまま使えると誤解されやすい点が最大の落とし穴です。
ここでは日本の免許が無効になる背景と、どのようなケースで合法的に運転できるのか、また無免許扱いになった場合のリスクについて詳しく整理します。
日本の免許が無効になる理由
日本は道路交通に関するジュネーブ条約に加盟しており、日本で発行される国際運転免許証もこの条約を前提として作られています。
一方ベトナムはウィーン条約型の国際免許のみを受け入れており、ジュネーブ条約型の国際免許は制度上互換性がないため無効と見なされます。
その結果、日本の運転免許証と日本で発行された国際運転免許証を提示しても、ベトナムでは法的に有効な運転資格とは認められません。
1968年型国際免許が有効なケース
自国で1968年条約型の国際運転免許証を取得できる国のパスポートを持つ旅行者は、その国の免許証と国際免許のセットでベトナムの道路を合法的に走行できます。
この場合も国際免許の有効期間や、許可されている車種区分が自分の乗るバイクと合致していることを確認する必要があります。
日本人の場合は日本発行の国際免許が1968年条約型ではないため、この枠にハマるのは二重国籍や別の国で免許を取得した特殊なケースに限られます。
| 認められる国際免許 | 1968年ウィーン条約型 |
|---|---|
| 必要な組み合わせ | 自国免許証+1968年条約型国際免許証 |
| 日本発行の国際免許 | ジュネーブ条約型でありベトナムでは無効 |
| 日本人が合法運転できる例 | 他国(1968年加盟国)で免許と国際免許を取得している場合 |
無免許扱いで想定されるペナルティ
日本の免許や国際免許が無効な状態でバイクを運転すると、警察の取り締まり時には無免許運転として扱われる可能性があります。
罰金だけでなく、場合によってはバイクの押収や一時拘束などの行政処分が行われることもあり、旅行スケジュールに大きな支障をきたします。
さらに事故を起こした際には、相手への賠償責任や保険の不支給など経済的負担が一気に重くなる点にも注意が必要です。
- 無免許運転としての罰金
- バイクの押収や走行禁止
- 事故時の賠償負担増大
- 保険不適用による自腹対応
ツアー参加中心の移動選択
こうしたリスクを避けるため、日本人観光客がベトナムでバイク体験をしたい場合は、自分で運転せずにガイド付きのバイクツアーに参加する選択が現実的です。
信頼できるツアー会社であればドライバー側が必要な免許と保険を整えているため、参加者はヘルメット着用と安全指示に従うだけで済みます。
自分で運転するより自由度は下がるものの、交通事情が読みにくい初訪問の都市ではむしろ安心感が大きくなります。
在住者のベトナムバイク免許取得ステップ
仕事や留学などでベトナムに長期滞在する場合は、日常の足としてバイクを利用することも多く、そのためには現地のバイク免許をきちんと取得しておく必要があります。
ここでは在住者がバイク免許を手に入れるための前提条件と、日本の免許を書き換える場合と新規取得の場合の流れを整理します。
バイク免許取得に必要な前提条件
ベトナムでA1やA2のバイク免許を取得するには、年齢要件や在留資格などいくつかの条件を満たす必要があります。
一般的には18歳以上であることに加え、一定期間以上有効なビザや一時滞在許可証など、長期滞在を証明できる書類の提示が求められます。
健康状態に関する簡単な診断書の提出が必要になる場合もあるため、事前に指定病院やクリニックで準備しておくとスムーズです。
- 18歳以上であること
- 有効なビザや在留カード
- パスポート原本
- 健康診断書や写真
日本の免許を書き換える流れ
日本で既に二輪または自動車の免許を持っている在住者は、それをベトナム免許に書き換える方法を選ぶことで、学科試験が免除されるケースがあります。
多くの場合、日本の免許証の翻訳文を用意し、交通局やライセンスセンターで書き換え申請を行う形になります。
地域や時期によって必要書類や手続きの細部が異なるため、現地の行政窓口や日系エージェントから最新情報を確認しておくと安心です。
| 対象者 | 日本など他国の有効な免許保有者 |
|---|---|
| 主な必要書類 | 免許証原本と翻訳文 / パスポート / 在留カード |
| 試験の有無 | 学科免除で実技または簡易試験のみとなる場合あり |
| 取得できる免許 | A1またはA2などバイク用免許 |
| 手続き窓口 | 各都市の交通局やライセンスセンター |
試験を受けて新規に取得する流れ
日本で二輪免許を持っていない在住者は、ベトナムでのバイク免許を一から取得する必要があります。
この場合は教習コースで基礎的な操作を学んだ後、学科試験と実技試験の双方に合格して免許を取得する流れです。
教習所やエージェントによっては外国人向けに日本語や英語でのサポートを提供しているため、完全にベトナム語だけの環境に不安がある人はこうしたサービスの利用を検討するとよいでしょう。
必要書類や費用の目安
免許取得や書き換えの際に必要となる書類や費用は、制度変更や地域差により多少変動しますが、基本的な構成は共通しています。
証明写真や健康診断書は事前にまとめて用意しておくと、何度も窓口に通う手間を減らすことができます。
語学に不安がある人は、追加費用を払って通訳付きのサービスを利用することも視野に入れておきましょう。
- 証明写真数枚
- 健康診断書
- 翻訳費用や通訳費用
- 試験料や免許発行手数料
免許条件別の事故リスク
ベトナムでバイクを運転する際に、免許の有無や種類は単なる形式的な問題ではなく、事故発生時の責任や保険の補償範囲に直結する重要な要素です。
ここでは無免許運転がもたらすリスクや、合法的に乗っている場合との違い、そして安全に楽しむための判断基準について整理していきます。
無免許運転時の保険適用外リスク
ベトナムで無免許状態と判断された場合、多くの旅行保険やクレジットカード付帯保険では補償の対象外となる可能性が高くなります。
相手方の治療費や物損に加えて、自身の治療費や帰国後のリハビリ費用まで自己負担になるリスクを想定しておく必要があります。
保険約款には「各国の法律に従った運転」であることが補償条件として明記されていることが多く、免許の有効性はその前提条件にあたります。
- 保険金不支給の可能性
- 高額な治療費の自己負担
- 相手方への損害賠償リスク
- 帰国後の費用負担継続
事故発生時のトラブル事例
実際に事故が起きたとき、免許が無効だったことが判明すると、現場での示談交渉や警察での事情聴取が一気に不利になります。
レンタルバイク店との間で「貸し出し条件に違反している」と判断され、デポジットの没収や追加請求を受けるケースも想定されます。
相手側が重傷を負った場合には、刑事責任の追及や長期的な賠償義務につながる可能性もあるため、軽い気持ちでの無免許運転は避けるべきです。
安全に楽しむための判断基準
ベトナムでバイクを安全に楽しむには、「合法的に運転できるか」「自分の運転スキルで対応できるか」「保険でどこまでカバーされるか」という三つの観点で判断することが重要です。
これらの条件を満たせない場合は、自分で運転するのではなくタクシーやGrab、ツアー参加など別の手段に切り替えたほうが総合的なリスクは低くなります。
免許を取得して合法的に乗る場合でも、ヘルメットの品質や夜間走行の有無など、現地の交通事情に合わせた安全対策を徹底することが前提となります。
| 免許と保険の状態 | 合法運転で保険適用 / 無免許で保険対象外 |
|---|---|
| 運転スキル | 海外でのバイク経験あり / ほぼ未経験 |
| 交通環境への適応 | 渋滞やクラクションに慣れているかどうか |
| 推奨される移動手段 | 条件を満たせば自分で運転 / 難しければタクシーやGrab |
ベトナムでバイクに乗る前に確認したい要点
ベトナムでバイクに乗るかどうかを決める前に、自分の免許が現地法で有効かどうか、日本の国際免許が原則無効であること、そして50cc以下とそれ以上のバイクで求められる条件が大きく違うことを整理しておく必要があります。
短期観光であれば、無理に自分で運転せずGrabバイクやツアー参加で雰囲気だけ楽しむという選択肢も十分に現実的であり、長期滞在者であれば現地免許の取得や書き換えを通じて安全かつ合法的なバイク生活を目指すのが賢明です。
「せっかく来たから」と勢いでハンドルを握るのではなく、免許と保険、交通事情を冷静に見極めたうえで、ベトナムのバイク文化を自分なりのスタイルで楽しんでください。

