ベトナムで長期滞在を考えるとき、どのビザを選ぶかによって滞在できる日数や現地でできる活動範囲が大きく変わります。
とくに日本のようにビザ免除期間が設定されている国のパスポートを持つ人は、「免除枠だけで足りるのか」「どこからビザが必要なのか」を正しく理解しておくことが大切です。
さらに、観光やノマドワーク、駐在や現地採用、投資やロングステイなど目的ごとに適したベトナムのビザは異なります。
この記事では、最新のベトナムビザ制度を踏まえながら、長期滞在を前提としたビザの選び方と実際の申請ステップ、現地生活で気をつけたいポイントを整理して解説します。
なお、ビザ制度は頻繁に改定されるため、最終的な申請前には必ずベトナム政府公式サイトや在外公館で最新情報を確認してください。
ベトナムで長期滞在するためのビザの種類と選び方
まずはベトナムで長期滞在する際に選択肢となる主なビザの種類と、それぞれがどのような目的や滞在スタイルに向いているのかを整理して全体像をつかみます。
ビザ免除で滞在できる期間
日本のパスポートを持つ人は、一定の条件を満たせば観光や短期の商用目的でビザなし入国が認められています。
現在は多くの国籍に対してビザ免除の滞在可能日数が延長され、日本人の場合もおおよそ一回の入国につき四十五日程度まで滞在できる枠が設けられています。
このビザ免除枠はあくまで短期滞在向けの制度であり、四十五日を超えてベトナムに滞在する場合は別途ビザの取得が必要です。
また、ビザ免除で入国した後に現地でそのまま長期ビザに切り替えられるケースは限られるため、長期滞在を前提とするなら出発前からビザ戦略を立てておくことが欠かせません。
観光ビザと電子ビザの違い
「観光しながら三か月前後ベトナムに滞在したい」という人がまず検討するのが観光ビザや電子ビザです。
電子ビザはオンラインで申請できる仕組みで、有効期間が最長九十日、シングルかマルチプルかを選べるのが特徴です。
従来の紙の観光ビザは在日ベトナム大使館や領事館に申請して取得するもので、こちらも最長三か月のものが一般的です。
いずれも就労は認められていないため、あくまで観光やリモートワーク、現地企業と雇用契約を結ばないノマド滞在などに利用するのが前提になります。
ビジネス目的の長期滞在
出張ベースの短期訪問ではなく、現地との取引やプロジェクト対応のために頻繁にベトナムへ出入りする人はビジネスビザが候補になります。
ビジネスビザには、現地企業と取引する人向けやサービス提供のために入国する人向けなど、目的によって区分が分かれています。
多くの場合、現地法人やパートナー企業からの招聘状や招へい状が必要であり、日本側だけで完結する申請よりも準備書類が多くなります。
ビジネスビザで長期滞在したい場合は、ビザそのものに加えて労働許可証が必要になるケースが多いため、現地パートナーと早めに役割や条件をすり合わせておきましょう。
就労ビザで働きながら暮らす
現地採用や駐在員としてベトナムで働きながら長期滞在する場合は、就労ビザと労働許可証の取得が前提になります。
就労ビザは、現地法人と正式な雇用契約を結び、所定の条件を満たした上で発給されるもので、ビザの有効期間は通常一年から数年の範囲で設定されます。
就労ビザでの長期滞在は、滞在期間中の収入源が安定しやすい一方で、労働許可証の更新や会社側の都合によって在留条件が変化するリスクもあります。
そのため、就労ビザでベトナムに長期滞在する場合は、雇用契約の更新条件や解雇時の扱い、家族帯同ビザの可否なども含めて事前に確認しておくことが重要です。
投資家や経営者としての滞在
ベトナムに会社を設立したり、一定額以上を投資したりする場合は、投資家ビザやそれに続く一時滞在許可証が長期滞在の有力な選択肢になります。
投資額の規模に応じて投資家ビザの区分が分かれており、それぞれ申請できる一時滞在許可証の期間も二年から十年程度まで幅があります。
一時滞在許可証を取得すると、その有効期間中はビザ更新なしでベトナムに居住できるだけでなく、出入国もカード提示でスムーズに行えるようになります。
長期的にベトナムでビジネスを展開したい人や、将来のロングステイ拠点として現地に会社を持ちたい人にとって、投資家ビザと一時滞在許可証の組み合わせは重要な選択肢と言えるでしょう。
学生ビザと語学留学
ベトナム語を本格的に学んだり、大学や専門学校で学位を取得したりする場合は学生ビザが必要になります。
学生ビザは在籍する教育機関がスポンサーとなって申請されることが多く、在学期間に合わせて一年以内の有効期間が設定されます。
語学学校や大学に正規留学する場合は、入学許可書や学費の支払い証明書など、教育機関から発行される書類がビザ申請の中心となります。
学生ビザでの長期滞在を計画するなら、卒業後や退学後にどのようなビザに切り替えるのかも含めた中長期的なプランを考えておくと安心です。
家族帯同や結婚による滞在
ベトナム人の配偶者がいる場合や、すでにベトナムで働いている家族に帯同する場合は、家族滞在向けのビザや在留資格を利用する方法があります。
配偶者ビザや家族帯同ビザでは、就労の可否や滞在期間の上限などがビザの種類や主たる在留者の資格に紐づいて決まります。
長期的にベトナムで家族と暮らしたい場合は、主たる在留者のビザ種別と更新方針を前提に、家族のビザも同じスケジュールで切り替えていくことが大切です。
家族を帯同する場合は、滞在資格だけでなく、医療保険や教育環境、住居の確保なども含めてトータルで生活設計を考える必要があります。
長期滞在の基本ルールとビザ免除枠
ここではビザ免除や電子ビザを含む「滞在日数の枠組み」を理解し、どこから先が長期滞在ビザの世界になるのかを整理します。
ビザ免除四十五日ルールのポイント
日本のパスポートを持つ人は、観光や短期商用であればビザ免除制度を利用して一定期間ベトナムに滞在できます。
近年の法改正により、このビザ免除の滞在可能日数は従来の十五日前後からおおよそ四十五日へと延長されました。
四十五日以内の旅行や短期滞在であれば、往復航空券や宿泊先情報など基本的な条件を満たすことでビザ免除だけで滞在を完結できます。
一方で四十五日を超えて滞在する場合は、出国して再入国するだけでなく、長期滞在に適したビザを事前に取得することが推奨されます。
九十日電子ビザの仕組み
ベトナムの電子ビザは、オンラインで申請できる便利なビザ制度で、長期滞在の第一歩として利用する人が増えています。
電子ビザの有効期間は最大九十日で、申請時にシングルエントリーかマルチプルエントリーかを選択できます。
マルチプルエントリーを選べば、有効期間中であればベトナム国外へ出たり戻ったりを繰り返すことも可能です。
電子ビザは観光のほか、短期の商談や現地視察などにも利用できますが、現地での就労そのものを許可するものではない点に注意が必要です。
ビザ延長と再入国の考え方
長期滞在を目指すときによく話題になるのが、ビザ免除や電子ビザを組み合わせた「ビザラン」と呼ばれる再入国の手法です。
たとえば九十日の電子ビザで滞在し、その後一度出国してからビザ免除枠で再入国するなどの組み合わせは理論上可能です。
ただし、近年は長期滞在を目的とした短期ビザの乱用に対して各国とも審査を厳格化する傾向があり、入国審査官の裁量によって入国を拒否されるリスクもゼロではありません。
ビザ延長や再入国を前提にした長期滞在プランを組む場合は、制度変更の可能性も踏まえて余裕を持った計画を立てることが大切です。
長期滞在計画を立てるときの滞在日数の目安
ビザ免除と電子ビザを組み合わせると、どの程度までベトナムに滞在できるのかを大まかにイメージしておくと計画が立てやすくなります。
- 約一か月半以内の滞在ならビザ免除のみ
- 二〜三か月程度の滞在なら九十日電子ビザ
- 三か月超の滞在なら就労や投資など目的別ビザ
- 数年単位の居住なら投資家ビザや一時滞在許可証
短期間であればビザ免除で十分ですが、三か月前後の滞在になると電子ビザの活用が現実的な選択肢になります。
半年から一年以上の長期滞在を目指す場合は、就労や投資、留学など「滞在の目的」を明確にした上で、それに適したビザを選ぶことが不可欠です。
目的別に選ぶベトナム長期滞在ビザ
ここからは「どんな目的でベトナムに長期滞在したいのか」に応じて、主なビザの選択肢と特徴を整理します。
観光ノマド向きのビザ
会社に所属せずにリモートワークで収入を得るノマドワーカーや、観光をしながら滞在する人にとって使いやすいのが電子ビザと観光ビザです。
電子ビザはオンライン申請だけで完結し、公的機関の窓口へ出向く必要がないため、準備にかかる手間を大きく減らせます。
三か月前後の滞在であれば、九十日の電子ビザを取得することで、現地で部屋を借りて生活しながら仕事に集中することも可能です。
ただし、日本の居住者であってもベトナム側の制度上はあくまで観光目的扱いとなるため、現地企業との雇用契約や給与所得を伴う仕事は行えません。
| 目的 | 観光やノマド滞在 |
|---|---|
| 代表的なビザ種別 | 電子ビザや観光ビザ |
| 最長滞在期間の目安 | 九十日前後 |
| 就労の可否 | 原則不可 |
| 向いている人 | リモートワーカーやフリーランス |
駐在員や現地採用向きのビザ
ベトナムの企業に雇われて働く場合は、就労ビザと労働許可証の組み合わせが基本となります。
就労ビザは現地企業や駐在元企業がスポンサーとなり、必要な書類を準備した上で当局の審査を受けて取得します。
労働許可証の有効期間に合わせて一年から二年程度のビザが発給されることが多く、その都度更新を重ねることで長期滞在が可能になります。
駐在員や現地採用としてベトナムに住む場合は、給与水準や福利厚生だけでなく、家族帯同ビザの扱いや住居手当なども含めた条件を総合的に確認しましょう。
投資家ビザと一時滞在許可証
現地企業に出資したり、自ら会社を設立したりする場合は投資家ビザの利用を検討できます。
投資額に応じて発給されるビザの区分が変わり、それに紐づく形で最長二年から十年までの一時滞在許可証を申請できます。
一時滞在許可証は、いわば外国人のための在留カードのようなもので、カードが有効な間はビザを更新しなくてもベトナムに居住できます。
長期的にベトナムでビジネスを展開し、出入りも頻繁になる人にとっては、投資家ビザと一時滞在許可証による長期滞在が最も安定した選択肢の一つです。
リタイアメントやロングステイで使える選択肢
東南アジアの一部の国には、定年後の移住者向けにいわゆるリタイアメントビザが用意されていますが、ベトナムには現時点で専用のリタイアメントビザはありません。
そのため、年金や資産を元にベトナムへ長期滞在したい人は、投資家ビザや家族帯同ビザ、学生ビザなどから自分の状況に合ったものを選ぶ必要があります。
たとえば、語学学校への長期通学と組み合わせて一定期間ベトナム語を学びながら暮らす方法や、現地ビジネスへの投資を通じて投資家ビザと一時滞在許可証を取得する方法が検討できます。
今後は長期滞在者や高度人材を対象とした新しい長期ビザ制度が導入される可能性も取り沙汰されているため、ロングステイを検討している人は制度のアップデートにも注目しておくとよいでしょう。
ベトナムで長期滞在するための手続きと必要書類
ここでは長期滞在ビザを実際に取得する際に必要となる書類や申請の流れを押さえ、準備の抜け漏れを防ぐことを目指します。
事前準備でそろえておく書類
どの種類のビザを申請する場合でも、まず共通して必要になる書類から揃えておくと手続きがスムーズになります。
- 残存有効期間六か月以上のパスポート
- 顔写真付きの証明写真
- 往復または次の渡航先の航空券予約情報
- 宿泊先や現地連絡先の情報
- ビジネスや就労の場合は招聘状や雇用契約書
- 投資の場合は登記簿や投資証明書
電子ビザのみであれば紙の書類は最小限で済みますが、就労や投資など本格的な長期滞在ビザになるほど求められる書類は増えていきます。
必要書類の内容は頻繁に見直されるため、申請前に公式サイトや大使館の案内で最新のリストを必ず確認しましょう。
電子ビザ申請のステップ
電子ビザは、ベトナム政府が運営する専用サイトからオンラインで申請するのが基本です。
申請ページではパスポート情報や渡航予定日、入国予定の空港や国境ゲートなどを入力し、顔写真とパスポート画像のデータをアップロードします。
申請料の支払いはクレジットカードなどオンライン決済で行い、支払いが完了すると審査結果が通知されます。
承認された電子ビザは、自分でデータをダウンロードして印刷し、入国時にパスポートと一緒に提示する必要があります。
大使館やビザ代行会社を利用する場合
紙の観光ビザやビジネスビザ、就労ビザなど、電子ビザの対象外となるビザを取得する場合は在日ベトナム大使館や領事館での申請が必要です。
東京や大阪、福岡などにあるベトナム大使館や領事館では、窓口申請や郵送申請の案内が用意されており、申請書と必要書類を提出して審査を待ちます。
自分で書類を整えるのが不安な場合や、短期間で確実にビザを取得したい場合は、ビザ代行会社に手続きを依頼する方法もあります。
代行会社を利用する場合は、手数料とサポート範囲、申請にかかる日数を比較し、自分のスケジュールに合うサービスを選びましょう。
長期滞在ビザで暮らすときの実務と注意点
ビザを取得してベトナムに長期滞在するようになると、在留手続きや生活面での実務的なポイントにも気を配る必要があります。
住所登録と在留カードに相当する制度
ベトナムでは、一定期間以上滞在する外国人に対して住所登録や一時滞在許可証の携行が求められることがあります。
投資家ビザや一部の長期ビザを持つ人は、一時滞在許可証というカードを取得することで、ベトナム国内での身分証として利用できます。
このカードを持っていると、ビザの更新手続きの頻度を減らせるだけでなく、銀行口座の開設や長期賃貸契約などもスムーズに進みやすくなります。
長期滞在を始めたら、現地のパートナーや専門家と相談しつつ、住所登録や一時滞在許可証の取得を含めた在留手続きを早めに進めることが大切です。
医療保険と安全対策
長期滞在中の病気やケガに備えるためには、海外旅行保険や現地の医療保険への加入が欠かせません。
短期旅行向けの保険では補償期間が足りない場合も多いため、長期滞在者向けのプランや国際医療保険を検討する必要があります。
主要都市には外国人も利用しやすい国際病院や大規模病院がある一方で、地方では医療インフラが十分でない地域もあります。
長期滞在ビザを取得した後は、滞在先の近くにある病院やクリニックの場所、緊急時の連絡先をあらかじめ把握しておくと安心です。
ビザルール変更への備え
ベトナムのビザ制度は、観光客や投資を呼び込む目的で頻繁に見直されており、長期滞在の条件も数年単位で変化することがあります。
自分が利用しているビザの条件が改定されると、更新時に必要な書類や滞在可能期間が変わる可能性があります。
長期滞在中は、在ベトナム日本国大使館やベトナム政府の公式サイト、信頼できるニュースソースを定期的に確認し、制度変更の情報をフォローすることが重要です。
制度変更の噂や未確認情報だけで判断せず、必ず一次情報を確認した上でビザ更新や切り替えのスケジュールを組み立てましょう。
ベトナム長期滞在ビザ選びの要点整理
ベトナムで長期滞在を実現するには、まず四十五日のビザ免除枠と九十日の電子ビザでどこまでカバーできるかを把握した上で、滞在期間と目的に合わせてビザを選ぶことが重要です。
三か月前後までの滞在なら電子ビザや観光ビザ、それ以上の期間や就労を伴う場合はビジネスビザや就労ビザ、投資家ビザ、学生ビザ、家族帯同ビザなどの選択肢が現実的になります。
さらに、投資家ビザや一時滞在許可証を活用すれば、数年単位でベトナムを拠点とした生活を築くことも可能です。
ビザ制度は今後も変化する可能性が高いため、最新の公式情報を確認しつつ、自分のライフプランや働き方に合ったビザ戦略を立てることが、ベトナム長期滞在を成功させる最大のポイントと言えるでしょう。

